ご承知のとおり、介護保険法は3年に1度の頻度で改定が行われ、その時代やニーズ、社会情勢などの変化に対応しながら見直されています。今回の2024年改定でも、細々した部分を挙げればキリがないですが、大きな柱としては介護需要の増大や介護人材の確保に向けた改定に焦点が当たりました。今回は、2024年介護報酬改定の大きな柱となる4つの視点を見ながらそのポイントをやさしく解説していきます。
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
「地域包括ケアシステム」をより実現に近づけるために、これまでもさまざまな施策が行われてきました。今回は、質の高いケアマネジメントを切れ目なく提供し、地域の実情に合うような効率的な施策をすすめるために、具体的な取り組みが追加されています。主なものを見てみましょう。
BCPの策定と高齢者虐待防止措置が未実施の場合の減算
BCP(業務継続計画)は、災害や感染症が発生した場合でも、介護サービスが継続して提供できるようにあらかじめ対応策を決めておくために作成されます。この計画が作成できていない場合や、必要とされる対策ができていない場合は、減算となります。
また、高齢者虐待を防止するための委員会設置や取り組みが行われていない場合、基本報酬から10%が減算されます。
特定事業所加算の見直し・強化
特定事業所加算とは、質の高い介護サービスを提供する事業所に対して評価し、加算するものを指します。例えば、訪問介護員への研修や適切なサービス提供のための会議の実施、緊急時における対応の明示、医療行為が必要な利用者の一定数以上の受け入れ、全体の介護職員に対する一定以上の介護福祉士の配置などの要件を満たす必要があります。これまでにも存在していた加算ではありますが、加算の点数が大きくなったことが重要なポイントです。
介護予防支援の強化
市町村から指定を受けた居宅介護支援事業所は、介護予防支援を実施できるようになりました。これまでは、介護予防支援は居宅介護事業者が地域包括支援センターから委託を受けて実施してきました。しかし、この改定からは指定を受けた居宅介護支援事業所は地域包括支援センターとともに介護予防支援にあたることとなります。地域包括支援事業所の業務負担を減らして権利擁護や幅広い相談に対応できる体制となることが期待されています。
自立支援・重度化防止に向けた対応
利用者の自立や重度化防止への取り組みをより促進するために、リハビリや口腔ケア、栄養管理などジャンルの異なるケアを一体化し、その体制づくりが評価される仕組みが充実しました。
質の高い介護の実現が評価される
これまでにも、自立支援や重度化防止に向けた取り組みが加算という形で評価されることもありましたが、実際に要介護5の方が要介護2に改善するなどの成果があっても、基本報酬が減り「ケアが正しく評価されていない」と不満をもつ方は多かったのではないでしょうか。
しかし、今回の改定では「科学的介護推進体制加算」が見直され、科学的介護情報システムLIFEへのデータ提出で客観的に自立支援や重度化防止の取り組みが評価される体制がより充実しています。
リハビリテーション・口腔管理・栄養管理に関する加算の見直し
リハビリテーションに関する新たな加算区分が追加となりました。有資格者の配置や実施体制を整え、大型規模の事業所であっても要件を満たせば通常規模型と同様のより手厚い加算が算定できます。
介護保険施設では、リハビリ・個別リハビリ・口腔管理・栄養管理に係わる一体的計画書の見直しが実施されました。そして、訪問系や短期入所等のサービスで口腔連携強化加算が追加、入所系のサービスでは入所時と入所後の定期的な口腔衛生管理が義務化されるなど、利用者の口腔衛生と栄養管理に対する取り組みが評価されやすい仕組みに変わってきています。
適切な医学的管理による自立・重度化防止
かかりつけ医との連携で適切な処方に役立てることや、不適切な処方を減らし適切な医学的管理を行うことが自立や重度化防止のための取り組みとして評価されます。入所系の施設では、入所時よりも退所時の薬剤が減るなど、重複処方などのポリファーマシー問題の解決につながり、それに対して加算もつくようになりました。
良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
介護に従事する人材の確保は、とても大きな課題の1つです。今回の2024年改定でも、介護職員の人材確保や職場改善のための施策が加わりました。
介護職員等処遇改善加算の新設
改定前に存在していた「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が統合され、「介護職員等処遇改善加算」として新設されました。これにより、現状よりも基本給が2%以上増えるよう、加算率の引き上げが行われています。
生産性向上推進体制加算の新設
見守りのための機器など、介護用ロボットやICT等のテクノロジーを活用して、介護現場での生産性向上に取り組んでいる事業所は、人員配置基準や報酬算定の見直しが行われました。また、外国人の介護職員の人員配置についても基準が見直されています。
効率的なサービス提供の推進
法人等で、複数の事業所をもつ場合、これまで管理者が兼務できる範囲は同一敷地内に限られる等の制限がありました。この要件が緩和され、管理者の責務を明確化し問題なく果たせる場合は、同一敷地内でなくても兼務することが可能になっています。
制度の安定性・持続可能性の確保
介護保険制度が安定して持続的に行われるためには、報酬単位の見直しが適宜行われる必要もあります。一部では、報酬単位が減算されるといった見直しもありました。
訪問介護の同一建物減算の見直し
訪問介護サービスにおいて、正当な理由なく事業所と同じもしくは隣接する敷地内の建物でサービスを提供する割合が全体の90%以上となった場合、4.12%の減算となります。
訪問看護での理学療法士の訪問に関する見直し
訪問看護事業所に所属するスタッフは、看護師ばかりとは限りません。理学療法士などのリハビリ専門職が訪問を行い、医学的な管理のもとリハビリテーションを実施することもあります。しかし、看護職員よりも理学療法士等が訪問する回数が多い場合、減算となることが決まりました。
老健や介護医療院の多床室の利用料負担増加
介護老人保健施設での入所やショートステイ、介護医療院の入院時、多床室の利用者は月額8,000円相当の室料負担が増えることとなりました。
まとめ
2024年介護報酬改定の大きな柱となる4つのポイントについて解説しました。細かい変更点を挙げればキリがなく、報酬改定の度に対応していくのはとても大変なことですね。しかし、こうした変更点は、介護の世界で働く人々だけでなく、利用者やその家族も知っておくべき情報が多く含まれています。自社のホームページがあると、利用者やその家族にとって重要なポイントをその都度分かりやすく解説したり、制度改定によって変更となった部分の情報をその都度切り替えることで、つねに新しい情報を届けたりすることができます。これからホームページを作成する場合はもちろん、自社のホームページをもっと充実させたい、利用者ファーストのサイトをつくりたいという場合も、プロに任せると安心です。